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猿沢池は興福寺の五重塔を背景に奈良の名所として、記念写真スポットとしても有名で、多くの観光客が訪れるばかりではなく、市民の憩いの場にもなっています。
また、中秋の名月の際には采女祭が行われ、古代王朝絵巻さながらの光景が見られます。
この猿沢池について、皆様に色々紹介するページです。

猿沢池と興福寺五重塔 |
【 猿沢池に関して 】
猿沢池は、興福寺の放生池で、周囲約360m、面積約7,200m2の池で、「興福寺流記」に、「宝字記云、南花園四坊、在池一堤、名佐努作波」と記述があり、奈良時代には興福寺南花園に「佐努作波池」が築造されていたと考えられています。「佐努作波池」の名前の由来としては、池の北側は三条通りの辷(すべり)坂に接し南側に尾花谷川が流れる位置関係から「佐努」は狭野、「作波」は沢の意味と考えられています。のちに「猿沢池」という記述になりますが、遙かインドの猿猴池(えんこういけ)からとった(「天平年流記」)など諸説あります。
古くから「澄まず濁らず、出ず入らず、蛙はわかず藻は生えず、魚が七分に水三分」猿沢池の七不思議とされています。
現在でも夏の放生会の際、鯉や鮒が池に放たれています。
【 猿沢池と竜伝説 】
猿沢池には竜伝説があります。古くから、猿沢池は竜宮に繋がっているとされ、竜が住み水神信仰をのある池です。
しかし、帝の寵愛が薄れた事を悲しんで采女が身を投げたため、死穢を嫌い、春日山の香山(こうぜん)に移り住んだとされています。しかし、後にこの場所にも屍を捨てる者が出始めたために、室生の竜穴(りゅうけつ)に住まいを移したという伝説が伝えられています。よって、春日山の香山神社は竜の遺跡とも呼ばれ、雨乞い祈願は香山神社で行われています。
【 采女(うねめ)神社と采女祭 】

采女神社 采女祭 |
池の西北の道を隔てた所に小さな祠があります。この神社が采女神社で、祠が後ろ向きに建つ珍しい神社です。
祭神は事代主命(ことしろぬしのみこと)または采女命と伝えられていいます。
遙か昔、帝(文武天皇)に仕えた采女が、帝の寵愛が薄れたのを悲しみ、ある名月の夜、池畔の柳の木に衣をかけて池に身を投じた。そのことを帝がたいへん不憫に思い、池の畔に社を建てて采女の霊を慰められた。最初は、池に向かって社が建てられていたが、采女の霊は「我が身を投じた池を見るにしのびない。」と一夜のうちに池を背に向けたために祠が後ろ向きになっているという伝説があります。また、春日明神を敬い祠を西向きにしたという節がもありますが、こちらの方が現実的であると考えられます。
この采女神社の祭りは、采女が月夜に池に身を投じたという事から、毎年、中秋の名月夜に行われ、楽士らを乗せた二艘の管弦船(龍頭・鷁首)が猿沢池を静かに回り花扇を池中に投じ采女の霊を慰める儀式です。
この采女の伝説は、「大和物語」にも「平城天皇に仕えていた采女が、帝の寵愛が衰えたのを嘆き、猿沢池に身を投じた」という話が存在しています。(伝説では、文武天皇であるが、ここでは平城天皇となっている。)
百五十 猿沢の池
むかし、ならの帝につかふまつる采女ありけり。貌かたち美じうきよらかにて、人々よばひ、殿上人などもよばひけれと、あはさりけり。そのあはぬ心は、みかとかきりなくめてたき物になんおもひ奉りける。みかとめしてけり。扨後又もさざりけれはかぎりなく心うしとおもひけり。夜昼、心にかかりておぼえたまひつつ、恋しう、わびしうおぼえ給ひけり。帝は召ししかど、ことともおぼさず。さすがに、つねには見えたてまつる。なほ世にふまじき心地してければ、夜みそかにいでて、猿沢の池に身をなけてけり。かくなげつとも、帝はえしろしめさざりけるを、ことのつゐてありて、人のそうしければ、聞しめしてけり。いとうあはれかり給ひて。池のほとりにおほんみゆきし給ひて、人々にうたよませ給ふ。柿本人麻呂
わきもこかねねくたれかみをさるさわの
池の玉藻とみるそかなしき
とよめるときみかど
猿沢の池藻つらしなわきもこか
玉藻かづかは水そひなまし
とよみ給ひけり。扨此池にはかせ給ひてなんかへらせおはしましけるとなん。
「大和物語 (百五十 猿沢の池)」

大和名所図会 |
【 猿沢池と月 】
室町時代頃から「猿沢池の月」が南都八景の一つとしてもてはやされるようになり、「実隆公記」に「猿沢池月眺望無比類者也」と記述があり、京都の貴族にもてはやされていた事がうかがえます。
また、奈良八景の第三として、「のとかなる波にそこほるさるさはの池より遠く月はむすとも」(飛鳥井雅幸)とも詠まれています。
【 参考文献 】
「大和史料」 (臨川書店)
「奈良の伝説」 岩井宏美、花岡大学 編・著 (角川書店)
「奈良県の地名(日本歴史地名体系30)」 (平凡社)
「南都年中行事」 村井古道 著 喜多野徳俊 訳・注 (綜芸舎)
「奈良市史 (社寺編)」 奈良市史編集審議会 編集 (奈良市)
「日本古典文学全集 第8巻」 高橋正治 校注・訳 (小学館)
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